【配偶者居住権が設定された建物を第三者に賃貸する場合の注意点】
まず、配偶者居住権は他人に譲渡できません。
しかし、配偶者が施設に入居する場合などには
配偶者居住権は不要になりますが、
今後の生活資金が必要になります。
そこで、賃貸借以外の方法として、
配偶者居住権を放棄して、その対価として
建物所有者からその時点の配偶者居住権の
評価に見合う金銭を受領するという方法が考えられます。
これは、配偶者居住権の売買契約による譲渡とは
異なるものと考えられているようです。
もっとも、配偶者居住権の登記に見合う
金銭を支払ってもらうには、
建物所有者との合意が必要ですから、
必要になったときに必ず合意してもらえるとは限りません。
そこで、配偶者居住権を設定する
遺産分割協議の際に、居住建物取得者との間で、
将来放棄するときの対価支払いを合意しておく必要があります。
そして、第三者に居住していた建物を賃貸する場合。
配偶者居住権は、使用しかできない
「配偶者短期居住権」とは異なり、
使用だけでなく収益を得ることも出来る権利です。
配偶者は、建物所有者の承諾を得て
第三者に賃貸して収益を得ることが出来ます。
なお、承諾なく第三者に賃貸すると、
建物所有者から配偶者居住権の消滅請求を受け、
配偶者居住権を失うことになるので注意が必要です。
賃貸借契約を締結する場合、
賃借人に対して説明すべき注意点は大きく分けて2点あります。
■配偶者居住権の設定登記がされていることを確認
配偶者居住権の設定登記がなされないまま、
建物が第三者に譲渡された場合、
対抗できず、明け渡さなければならなくなるからです。
また、建物所有者の承諾についても、
書面での承諾があることを確認しておく必要があります。
■存続期間の確認
配偶者居住権の終期が配偶者の死亡の時である場合には、
終期が不確定期限となるため、
賃借人としてはいつ退去を求められるか
分からないことを十分に認識、納得してもらう必要があります。
この場合、借主はいつまで借りられるのか
見通しがたたないので、配偶者死亡後も継続して
借りられるようにする手立てとして、
建物所有者も交えた三者合意として、
配偶者が死亡したときは、
建物所有者が賃貸人の地位を承継するとの合意をすることが考えられます。
配偶者居住権の設定登記がされているか
存続期間はどれくらいか確認しておくことが大事です。
配偶者が住み慣れた住居に
住み続けられるように「配偶者居住権」が設けられました。
施設に入る時など、
将来「配偶者居住権」が不要となった場合の対処法など、
先を見据えて設定をする必要があります。
=おわり=
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ICA公認 相続対策コンサルタント 高山幸也
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